わが家のASD息子が小学校に入学する前、字が上手に書けない息子を見て、不安を感じていた時期がありました。

きちんと閉じた円が描けない…
筆圧が弱くて線が薄い…
鉛筆を正しく持てない…
など、たくさんの悩みを抱えていました。
さらに、息子が4歳ごろから通っている発達外来で、就学前に受けた発達検査でも手先の不器用さを指摘されました。
その結果、主治医の先生に相談し、作業療法(OT)を受けることになりました。
作業療法で「書く力」を育てるステップを教わり、家庭でも継続して取り組むうちに、少しずつ息子の自信につながってきたように感じます。
この記事では、書くのが苦手なASDのお子さんのために作業療法で学んだサポート方法をまとめました。
焦らず、少しずつ、「できた」経験をたくさん積み重ねていくことで、書くことを楽しむ力につながります。
ASDっ子が「書くのが苦手」になりやすい理由
ASDの子どもが、字を書くのが苦手なのは、決して珍しいことではありません。
わが家の息子の場合、字を書くこと自体は嫌いではないのですが、こだわりが強く、自分の思うままに書きたい気持ちがあります。

「こうやって書いて!」と指示したり「ここは違うよ!」と指摘すると…
書く意欲を一気に失ってしまいます。
お子さんによって「字を書くのが苦手」な理由はさまざまです。
まずは、その理由をひとつずつ理解し、「どうサポートすればいいのか」を考えるヒントを見つけていきましょう。
手先の不器用さや運動面の発達の遅れ
ASDのお子さんは、手先の動きや全身のバランスをとる「運動面の発達」がゆっくりな場合があります。
そのため、鉛筆を正しく持つ・紙を押さえる・線をなぞるといった細かい動作が難しいです。
息子の場合も、発達の遅れがあります。
さらに、息子にはASDの特性の一つである「感覚過敏」もあり、全身を使った運動や手先の動きの経験が少なかったことも影響しているように感じます。
力加減が難しく、筆圧が安定しない
ASDのお子さんは、力のコントロールが苦手なケースも多いです。
力を入れすぎて鉛筆の芯を折ってしまったり、逆に力が弱すぎて字がかすれてしまったり。
息子の場合も、作業療法を始めた当初は指の力が弱く、筆圧がとても不安定でした。
また、マスの中に文字を収められず、はみ出してしまうことも多かったです。
筆圧が安定しないと、「書けない → 嫌になる → 練習したくない」という悪循環に陥りやすくなります。
「間違えたくない」気持ちから書くのを嫌がる
ASDのお子さんは、こだわりが強く、完璧主義な一面を持っていることも多いです。
息子の場合、少しでも線が曲がったり、文字が気に入らないと、「もうやらない!」と投げ出してしまうことがありました。
このように、「書くのが苦手」な理由はひとつではありません。
原因を知ることで、どんなサポートが必要なのか、どう練習を進めていけばよいのかが見えてきます。
作業療法で学んだ!ASDっ子に合った「書く練習」の進め方

正しい鉛筆の持ち方で、きれいな字を書けるようになってほしい!
作業療法に通いはじめたころ、私は息子に対してそう思っていました。
でも、作業療法士さんから教わったのは、「まず、書くための準備を整えることが大切」ということでした。
書く力は、鉛筆を動かす技術だけではなく、姿勢・手の力・集中力・気持ちの安定など、たくさんの要素が関係していることを知りました。
作業療法に取り組む前に、息子の現状を把握する
最初に作業療法士さんが行ったのは、息子の「書く力」を細かく観察することでした。
息子がどこでつまずいているのかを知ることで、サポートの方法が変わります。
息子の現状と課題
「できない」ではなく、「どこが苦手なのか」を見つけることで、サポートの方向性が明確になります。
息子の場合は、鉛筆をしっかり支えるための指先の力をきたえる細かい運動(微細運動)と、姿勢の不安定さを改善するための体をしっかり動かす全身運動(粗大運動)が必要であると分かりました。
息子への教え方の工夫
また、作業療法士さんによると、お子さんによって「理解しやすい教え方」は異なるとのこと。
息子の場合は、言葉の遅れがあり、視覚優位のタイプです。
言葉のやりとりが苦手で、普段から絵カードや図で伝えることが多く、息子には「見て覚える」方法が合っていました。
作業療法でも、作業療法士さんが息子の近くで鉛筆の持ち方を見せたり、ゆっくり書く様子を実演しながら教えてくれました。
息子もイメージがつかみやすかったようで、作業療法士さんの動きをまねしながら、楽しそうに取り組んでいました。
書くための土台・環境づくり
作業療法では、「書く」トレーニングの前に、体の土台を整えることを大切にしていました。
さらに、体幹を鍛える運動を取り入れたり、集中しやすい環境を整えたりと、息子に合った工夫をしてくれました。
姿勢を安定させる
姿勢が不安定だと、集中力が続かず、手先の細かい動きがしにくくなります。
また、背中が丸まったり肘が浮いたままだと、力のコントロールが難しくなります。
息子の場合、作業療法士さんに体の動かし方を細かくチェックしてもらったところ、体全体が柔らかくクネクネしていて、力が入りづらいタイプだと説明を受けました。
そのため、書く練習の前に体を大きく動かす運動や体幹トレーニングを取り入れることで、姿勢の安定を促していました。
机・椅子の高さを整える
机が高すぎると肩が上がり、低すぎると前のめりになってしまいます。
そうならないように、椅子に深く座り、肘が自然に曲がる高さに調整することで、手元の動きが安定しやすくなります。
作業療法では、息子の足がしっかり床につく高さの子ども用イスと机を使用して、姿勢が崩れにくいようサポートしながら取り組んでいました。
また、家庭では、大人用のダイニングテーブルを使っていましたが、踏み台を置いて足がしっかりつくように安定させるだけで集中力がぐっとアップしました。
「文字のきれいさ」よりも「書く楽しさ」を育てる
作業療法士さんが大切にしていたのは、前向きな声かけと、息子のペースに合わせた対応です。
文字を書くことが嫌いにならないように、「きれいに書けた」ことよりも「書こうとした」取り組む姿勢をたくさん褒めて、息子のモチベーションを育てていました。
また、息子の気分が乗らず、予定していた訓練がスムーズに進まないときは、内容を柔軟に変更したり、工程を減らして楽しくできる範囲で行うようにしていました。

親としては、少しでも多く訓練をしてほしいですが…
その気持ちを抑えて、作業療法を見守っていました。
作業療法士さんの丁寧な配慮のおかげで、息子は最後まで前向きな気持ちで作業療法に通うことができました。
家庭でできる!ASDの子の「書く力」を育てるサポート方法
作業療法士さんに教わったことを、家でも少しずつ実践していきました。
毎日、練習の時間を作るというよりも、生活の中で自然に「書く」動作に触れられるように意識しています。
ここでは、わが家で効果を感じたおすすめのサポート方法を紹介します。
完璧を求めすぎない
ASDの特性をもつ息子は、間違うことを嫌がり、100%できる自信や保証がないと取り組もうとしません。
ちなみに、私自身にもASDの特性があると感じる場面があります。
自分の書いた文字に納得がいかなくて、何度も書き直してしまう経験がよくあります。

完璧を求めすぎるとしんどいです。
そこで、息子が間違ったときやうまくいかなかったときは、「全然間違っても大丈夫」「たいしたことないよ」と、息子が安心できる声かけを続けています。
そのおかげで、今では、先生から漢字宿題のやり直しを求められても、学校のテストで間違っても、落ち込むことが少なくなったように感じます。
「できている」部分を見つけてたくさん褒める
作業療法士さんから「字をきれいに書けることよりも、字を書けたことを認めてあげましょう」とアドバイスをもらってから、私自身の意識も大きく変わりました。
以前の私は、みんなと同じようにできないことに焦っていました。
そのため、息子にもやらせようと無理に勧めたり、気持ちが入りすぎて息子に強くあたってしまうこともありました。
今思うと、息子にとっては負担に感じていたことも多かったと思います。
それ以来、「できていない部分」ではなく「できている部分」に目を向けるようにしています。

「ここまでは書けたね!」「この“あ”の形、昨日より上手だね!」
このように、具体的に褒めるようにしています。
「できた」部分をたくさん見つけて言葉にしてあげると、「自分はできる!」と感じる経験が増えていきます。
その積み重ねが、自己肯定感を高め、書くことへの自信につながっていきます。
遊びの中で「書く」練習をする
「練習しよう!」と声をかけると、高い確率で拒否する息子。
息子がやりたいタイミングでないと、思うように練習が進みません。
そこで、遊びの延長で「書く」経験を増やすように工夫しました。
ぬりえやお絵かきで指先を動かす
「ぬりえ」や「絵をかくこと」は力加減や手首の動きをコントロールする練習になります。
好きなイラストを一緒に描いたり、ぬりえの色を選ばせるだけでも立派なトレーニングです。

息子は数字が好きだったので、親子で数字を繰り返し書いて楽しみながら練習しました。
壁に向かって書く(ホワイトボード活用)
壁に貼ったホワイトボードに書くと、自然と肘を伸ばし、肩を動かして書く練習になります。
身体全体を使うことで、書く動きがスムーズになりやすいです。
お風呂でお絵かきタイム
お風呂の壁に描けるクレヨンを使えば、水で簡単に消せるので安心です。
「字を書く=楽しい」感覚を育てるのにぴったり。
作業療法士さんからのアドバイス…壁に向かって書いたり、おふろの側面に書くと、手の平が内に向きやすく、書くコントロールがしやすい。
家の中でも、ちょっとした工夫で「書く」経験はたくさんつくれます。
書く時間を特別なものにせず、日常の一部として取り入れることが、無理なく続けるコツです。
息子の「書くのが苦手」をサポートしてくれたアイテム3選
作業療法で教わったことを家庭でも続ける中で、「これは使ってよかった!」と感じたサポートグッズがあります。
無理に練習させるよりも、自然と書く動作を助けてくれるアイテムを取り入れることで、息子の「書けた!」経験が少しずつ増えていきました。
ここでは、息子が実際に試して効果を感じたおすすめアイテムを3つ紹介します。
① シリコンパテ|手のトレーニングで指の力を育てる
作業療法でもよく使われる「セラパテ」は、手や指の力をきたえるのにぴったりのアイテムです。
やわらかい粘土のような感触で、ぎゅっと握ったり、つまんだり、引っぱったり。
遊びながら握力や指先のコントロールをきたえることができます。
感覚過敏のある息子は、ねんどの感触が苦手で最初は警戒していました。
ですが、この「セラパテ」は手にくっつきにくく、感触も気に入ったようで、息子のお気に入りになりました。
最初はうまく丸められず苦戦していましたが、次第に「ヘビをつくってみよう!」「丸をつぶしてみよう!」と、作業療法士さんのリクエストにもノリノリで取り組むようになりました。
力加減を楽しく練習でき、手先の発達をサポート//
② ザラザラ下じき|すべらず安定して書ける
息子は力の入れ方が不安定で、鉛筆の先がすべりやすく、文字を書くとサラサラと走り書きのようになってしまうことがありました。
作業療法士さんに相談しておすすめされたのが「ザラザラ下じき」です。
私が購入したタイプは、片面が少し凹凸になっていて、もう片面は通常の下敷きになっているので、用途に応じて使い分けができます。
凹凸面の方を使うと、紙が動かず安定して書け、力も入りやすくなります。
息子も「線が書きやすい!」と気づいてから、文字練習のハードルがぐっと下がりました。
筆圧が弱い・力加減が難しいお子さんにも◎//
③ えんぴつ補助グリップ|指の位置を自然に整える
作業療法では、作業療法士さんが何度も息子の鉛筆の持ち方を観察し、正しい位置に修正しながら指導してくれました。
しかし、家庭で私が同じように注意すると、息子はすぐにやる気をなくしてしまい、練習が進まないことも…。
そんなときに役立ったのが「えんぴつもちかた矯正グリップ」です。
やわらかいシリコン素材でできていて、指を置くだけで正しい位置にフィット。
私が注意しなくても、自然に正しい持ち方の感覚をつかむことができました。
おやこのストレスを軽減/自然に鉛筆の持ち方をサポート//
まとめ|焦らず、書くことを楽しめる環境づくり
ASDの子どもにとって、「書く」という動作は、姿勢、指先の力、感覚の敏感さ、気持ちの安定…など。
たくさんの要素が関わっています。
どれかひとつでも上手くいかないと、「できない…」「やりたくない…」につながってしまいます。
わが家の息子も、作業療法を始めたころは鉛筆を持つだけでもイヤイヤで、練習が進まず苦労しました。
でも、「無理に練習させる」のではなく、「息子のペースに合わせて」書く経験をを少しずつ積み重ねてきました。
そのおかげで、今では、学校の授業や家での学習で、毎日たくさん書くことができています。
これからも、焦らず、ゆっくり。

息子の「できた!」成功体験をたくさん増やしていきたいです。




