ASD(自閉スペクトラム症)の子どもにとって、「はさみ」を使うことは難しいスキルです。
ASDの診断を受けているわが家の息子も、4歳を過ぎても「はさみ」が使えず、幼稚園での工作活動を思うと心配でした。
しかし、病院や療育では練習の機会が得られず、家庭でできる方法を探そうと決意しました。
この記事では、家庭で取り組んだ「はさみ」の練習ステップと、実際に役立った市販のワークを紹介します。

楽しく取り組めるヒントを見つけてもらえたらうれしいです!
ASD息子の「はさみ」練習を家庭で始めた理由
家庭で「はさみ」の練習をしてみようと決意したのは、息子が4歳を過ぎた頃のことでした。
幼稚園復帰を予定して不安に…
幼稚園では、入園時に「はさみ」を購入し、年少さんから工作の時間で使い方を覚えていくそうです。
息子は年少のころ、一度は幼稚園に入園しましたが、数ヶ月であきらめて療育園に通うことになりました。
そして、年長になったら再び幼稚園に戻る予定でいました。

きっと、幼稚園の子どもたちは「はさみ」を上手に使える…。
全く「はさみ」が使えない状態で幼稚園に戻って大丈夫かな?
息子が「はさみ」を使えないことで困らないように。
そして、何より「はさみ」に慣れて工作の楽しさを知ってほしい。
そんな思いから、家庭での練習を意識し始めました。
主治医に相談するも、作業療法にはつながれず
「はさみ」の練習をどう進めたらいいのか分からない…。
そう感じた私は、発達外来の主治医に相談してみました。

作業療法で、「はさみ」の訓練をお願いできませんか?
しかし、返ってきた答えは次のようなものでした。
つまり、作業療法での練習は、まだ早いという判断でした。
当時、息子は4歳でしたが、発達年齢としては2歳半の状態でした。
さらに、やりたくないと思ったら絶対に動かないタイプでもありました。
作業療法を受けられないことに落ち込みましたが…。

それなら家庭で、息子のペースで少しずつ経験を積ませていこう!
同時に、前向きな気持ちも芽生えていました。
療育園では「はさみ」の練習がなかった
息子が通っていた療育園では、「はさみ」を使う活動は行われていませんでした。
理由は、衝動性が強い子も多く、小さい子が同じ部屋にいるため、危険が伴うからです。
実際、療育園にはさまざまな特性を持つ子どもたちが通っており、安全面を考えれば納得でした。
こうして、息子が「はさみ」に触れられる場は家庭しかないと再認識し、私自身がサポートしていく覚悟を決めました。
家庭でできる!ASDっ子の「はさみ」練習ステップ
息子にとって「はさみ」は、最初こそ興味がなく、何をするものなのか全く分かっていない様子でした。
でも、家庭で少しずつ段階をふんで練習していくうちに、「切ることが楽しい!」感覚が少しずつ芽生えていきました。
作業療法のような専門的な環境ではなくても、家庭で工夫しながらサポートすることで、子どもの「できた!」はしっかり育っていきます。
ここでは、わが家で実際に行って効果を感じた練習ステップを紹介します。
【STEP1】手の動きを育てる遊びからスタート
「はさみ」を上手に使うためには、まず「指先の力」と「手を思い通りに動かす力」を育てることが大切です。
作業療法にはつながれませんでしたが、主治医からは「手首の動きをきたえるといい」とアドバイスを受けました。
息子は最初、絵の具の感触が苦手で指につけるのを嫌がっていました。
そこで、私が見本を見せたり、スポンジを使ったりして、少しずつ慣れるように工夫しました。
次第に絵の具の感触にも慣れ、自分から指で描くようになり、積極的に取り組む姿が見られるようになりました。
【STEP2】危険性をわかりやすく伝える
「はさみ」は危ないものだという認識を持たせることも、とても大切です。
息子の場合、言葉の指示だけでは理解が難しいため、イラストを使って視覚的に伝えました。
また、危ない使い方をしてしまったときは、その日は「おしまい」にしました。
感情的に怒るのではなく、「危ないことをしたから、今日はおしまいにしようね」と、淡々と伝えるようにしました。
やってはいけないことはしっかり理解させることで、安心して練習を続けられるようになります。
【STEP3】指の位置を確認しながら「開く」「閉じる」を練習
「はさみ」を動かす前に、まずは「開く」と「閉じる」の動きを練習します。
最初は、「はさみ」を持たずに「グー・パー」と手の開閉を繰り返すところからスタート。
その後、子ども用の安全「はさみ」を持ち、刃を開閉する練習へと進みました。
無理なく進めることで、「はさみ」を動かす感覚を少しずつ身につけていきます。
【STEP4】線を意識して切る練習(直線→曲線へ段階的に)
「はさみ」の開閉に慣れてきたら、いよいよ紙を切る練習です。
最初から細かい線や曲線に挑戦するのではなく、まずは太い直線からスタート。
画用紙に太い線を描き、「線の上を通るように切ってみよう!」と声をかけながら練習しました。
慣れてきたら、少しずつ曲線やジグザグの線にもチャレンジしましょう。

ここまで切れたね!
うまくいかない日があっても、「やってみよう」とチャレンジできたことを大切にし、息子の「できた!」瞬間を一緒に喜びました。
家庭で取り組む!おすすめの「はさみ」練習ワーク
家庭で「はさみ」の練習を続ける中で、私がとても助けられたのが 市販のワーク教材 でした。
「はさみ」の練習を、遊び感覚でできるように工夫されていて、息子も前向きに取り組む時間がどんどん増えていきました。

もっと、やる!
ここでは、実際にわが家で試してみて、息子が夢中になって取り組んだおすすめのワークを紹介します。
くもんの幼児ドリル『はじめてのはさみ』
息子が最初に取り組んだワークは、くもんの幼児ドリル 『はじめてのはさみ』 でした。
「1回切り」から始まり、直線 → ジグザグ → 曲線 → 丸へと、スモールステップで進められる構成になっています。
「はさみ」を使い始めたばかりの息子でも、無理なく取り組むことができました。

「きる」楽しさを実感できます!
初めの1冊におすすめです!
学研の幼児ワーク『3~4歳 こうさく』
「はさみ」に少し慣れてきた頃、次のステップとして取り入れたのが 学研の幼児ワーク『3~4歳 こうさく』 です。
このワークでは、「きる」「おる」「はる」といった工程を組み合わせた作品づくりが中心になっています。
また、1ページごとに少しずつ難易度が上がる構成になっていて、自然と手先の動きが鍛えられます。

4歳の息子には少し難しかったですが、おやこで一緒に取り組みました。
さらに、作品が完成すると、動かして遊べる仕掛けつきのページも多く、息子は作品づくりから作品で遊ぶまでを一連の流れとして楽しんでいました。
おやこのコミュニケーションにもつながる、「学び+遊び」が両立できるワークです。
「はさみ」練習にはまった息子の変化と成長
息子の通っていた療育園での工作活動では、主に「のり」を使った制作が中心でした。
しかし、息子は「のり」が手につく感触が苦手で、工作の時間をあまり楽しめずにいました。
そんな息子が、家庭で「はさみ」の練習を始めたことをきっかけに、工作への興味が出てきました。
興味を持ち始めると一気に夢中
ASDの特性を持つ息子は、興味がないことにはまったく反応しませんが、ひとたび興味を持つと、集中してとことんやり込むタイプです。
息子の「工作ブーム」は、突然やってきました。
それは、「はさみ」を上手に使えるようになった4歳半ごろ。
療育園から帰っておやつを食べたあと、自分からワークを持ってきて、毎日、工作に取り組むようになったのです。
息子の工作ブームは数ヶ月続き、市販のこうさくワークはほとんど作り尽くしてしまいました。
放っておくと延々と切って貼ってを続けるので、「1日に3つまでね!」というルールを作り、決めた3つを親子で一緒に大切に作って遊びました。
親子で「一緒に取り組む」時間が増えた
息子はASDの特性が強く、コミュニケーションが苦手です。
特に3〜4歳の頃は、友だちと遊ぶのが難しく、1人遊びが多い時期でした。
さらに、私が息子の遊びに入ろうとすると「ダメ!」と怒るので、息子と一緒に遊ぶことができませんでした。
そのため、親子の関わりが少なく、さみしく感じていました。
でも、こうさくワークには、息子1人ではできない部分があるため、自然と「一緒にやる」流れが生まれました。
この時間がきっかけで、親子で同じことに集中して楽しむ経験が少しずつ増えていきました。
「のり」や「工作」へと興味が広がる
「はさみ」の練習に慣れてきたころ、「のり」を使った工作にも挑戦してみました。
最初は「のり」の感触を嫌がっていたため、私が「のり」をつけて、息子は貼るだけにするなど、少しずつステップを踏んでいきました。
すると、次第に「のり」の感触にも慣れ、「切って貼る」一連の流れを楽しめるようになりました。
この経験を重ねるうちに、療育園でも工作の時間が楽しくなり、年長で幼稚園に移行した後も、より細かい工程のある工作にも自信を持って参加できるようになりました。
まとめ|家庭での「はさみ」練習でおやこのコミュニケーションを深めよう!
「はさみ」の練習を始めたきっかけは、最初は単純に息子が「はさみ」を使えるようになってほしいという思いからでした。
けれど、家庭で一緒に練習を続ける中で、私は次第に気づきました。
それは、「上手に切ること」よりも、「一緒に楽しく取り組むこと」が何より大切だということです。
私自身も、もともとコミュニケーションが得意ではありません。
言葉の遅れがある息子に話しかけても反応がなく、どう関わればいいのか分からず悩む日もたくさんありました。

もっと話しかけたいのに、うまく言葉が出てこない…
そんなもどかしさを感じながら過ごしていた私にとって、はさみの練習や工作の取り組みは、親子の距離をそっと近づけてくれる時間になりました。
作業療法につながらなくても、家庭でできることはたくさんあります。
そして、親子で一緒に取り組むことには大きな価値があります。
焦らず、無理せず、その子のペースで。
「できた!」小さな瞬間を一緒に喜びながら、少しずつできることを増やしていきましょう!
切りやすくて安全な「はさみ」で練習しよう//


